2006年12月16日
意見発表作文
毎年1学期に行われる農業クラブ主催の意見発表という行事があります。
食料、環境、文化・生活の3区分のテーマがあり、
いずれかのテーマで意見作文を発表するものです。
毎年、6月の保護者会にあわせて、校内の代表選抜を行い、
選ばれた代表者が県大会や地区大会へ進むというものです。
今回は、酪農のことをつづり2年生のクラス代表に選ばれた
生徒の作文を掲載します。
食料、環境、文化・生活の3区分のテーマがあり、
いずれかのテーマで意見作文を発表するものです。
毎年、6月の保護者会にあわせて、校内の代表選抜を行い、
選ばれた代表者が県大会や地区大会へ進むというものです。
今回は、酪農のことをつづり2年生のクラス代表に選ばれた
生徒の作文を掲載します。
[ハットリ]
牛たちが私に与えてくれたもの 2年 A.S.
私の一日は一頭一頭の牛にあいさつすることから始まる。毎日変わらず元気にあいさつしてくれる牛たちはとても可愛い。
私が酪農部を専攻しようと思った理由。それは、動物が好きだったから。これだけ言うと、豚部と養鶏部も選択肢に入るのですが、私は動物と長くて深い付き合い方がしたかったのです。それには一羽一羽の名前がない養鶏部や、ほぼ半年から一年の付き合いの豚部ではなく、一頭一頭名前がつけられていて、種つけの時から出産、離乳、育成牛、成牛へと成長するまでの長い時間を共に過ごすことのできる酪農部にとても魅力を感じていました。
部門を決める長い話し合いの末、第一希望の酪農に入ることができた時はただ嬉しくて、これからどんな仕事をするのか、どんなことが起こるのかなど、何も考えていませんでした。
初めて先輩に管理指導してもらう時は、とても楽しみでした。それが、実際やってみると、とても神経を使う仕事であることが分かり、初めて一人で管理をまかされる前の日は緊張してねむれない程でした。そして、管理中に初めて牛にけられた日はずっと恐怖が消えませんでした。牛がとても怖いものに感じられ、愛情をもって接することができなくなってしまいました。(またけられたらどうしよう・・・怖いなぁ・・・)と思いながら搾ると、牛は私の気持ちを察しているかの様に、とても不安な顔をしておちつきません。(この人にまかせて大丈夫かなぁ…)と思われていたのかもしれません。そんな時は、動物にもちゃんと心があって、こちらの心をよみとることができるんだと思いました。私の気分がおちこんでいて、少しいいかげんに搾乳すると、牛は怒ってけってくるし、逆に元気な時、丁寧に搾乳すると、それに応えておとなしくしていてくれます。だから、私はいつも気分がおちこんでいる時は、牛の行動、表情を見て(これではいけない!牛たちのためにもしっかりしないと)と、励まされます。そして、励まされる度に、動物の力はすごいと感心するのです。
私がいつも牛たちに癒やされ、元気をもらっている様に、私も牛たちに癒やしや嬉しさといった幸福を提供していけたら良いなぁと思います。
酪農部に入ってから楽しみだと思うものは週三回の実習です。「実習かぁ、めんどくさい」などと言っている声をたまに聞いたりしますが、私にとって実習とは牛と接することのできる時間であり、外で作業できるとても楽しい時間なのです。私が好きな作業は、糞出しです。少し汚くてみんなのやりたがらない作業ですが、エサの配合や、なわづくりなどと違って、直接牛と触れ合いながらできるのです。糞出しは力仕事で汗をかきますが、終った後、牛が気持ち良さそうに、もみがらの上に寝そべっているのを見ると、その汗と疲れはとても気持ちの良いものへと変わります。
酪農部に入って一ヶ月ほど経った頃、子牛の出産に出会いました。子牛の出産は本当にすばらしく、ついさっきまで親牛のお腹の中で力を借りて生かされていた命が、外に出るとすぐに息をして必死に自分の力で親牛の乳を探して立とうとしています。生まれたばかりの小さな子牛からは、とても大きな生きる力を感じさせられました。本当に生きているんだなぁと感動しました。こうして私の動物への思いはますます強くなりました。
しかし、私が体験したものは喜びだけではありませんでした。もう一つ私が体験したものは悲しみです。それは牛の出荷です。FⅠという和牛の種類が生まれた場合、普通二ヶ月ほどで出荷されてしまいます。私が五時頃、朝一番に歩いていくといつもとび起きて、しっぽを振りながら寄ってきます。私はそんなFⅠの子牛たちが大好きでした。ずっと一緒に居られたら良いと思っていました。二ヶ月ほど経ったある日、夕方の管理に行くと、いつも迎えてくれる子牛が居ません。(今日は元気が無いのかなぁ・・・)と心配してハッチを覗くと、そこに居るはずのFⅠの子牛が居ませんでした。不安になって牛舎の周りを探しました。どこを探しても見つかりません。するとそこに先生が来られて「もう、出荷しちゃったよ」と言われました。私はこんなにも急に行ってしまうと思っていなかったので、頭がボーとしてしまいました。不思議に悲しみという感情は無くて、ただそこに子牛が居ないということが、信じられませんでした。次の日の朝も、いつもの様にハッチを覗いてしまい、居ないのだということに気が付いて、急に心の中が、寂しさでいっぱいになりました。
朝、一番最初に顔を見せてあいさつしてくれたあの小さな子牛が、私にとってとても大きな存在だったということに気付かされました。
酪農部に入ってまだ四ヶ月ほどしか経っていませんが、今までの経験で、やっぱり動物は私にとって必要なものだと思いました。
そこで私は考えてみました。私は今、牛たちに必要とされているのでしょうか。可愛がっているだけでは駄目なのだと思います。
牛を見る目をもっと見開いて、小さな変化にも気付ける力をつけたいと思います。例えば、牛舎を清潔に保てるのも衛生上の愛情、丁寧に乳を搾るのも乳房炎などを防ぐ愛情、いち早く病気などに気付くのも体調管理上の愛情であり、まだ私には出来ていないことの方が多い様に思います。牛のためにできること、それは日々の管理や実習の中にたくさん隠されています。今、私が出来ること。それを探し出して、牛にとって重要なパートナーになれる様にがんばりたいです。いつ牛との別れの日が来るのか分からないのだから、牛たちとの毎日の触れ合いを無駄にしないで、いつでもベストな接し方、後悔しない日々をおくっていきたいと思いました。これからも、いろんな発見がまだまだありそうで、楽しみです。そして、酪農部で過ごす約一年半を、後悔のない充実したものにしていきたいと思っています。
私の一日は一頭一頭の牛にあいさつすることから始まる。毎日変わらず元気にあいさつしてくれる牛たちはとても可愛い。
私が酪農部を専攻しようと思った理由。それは、動物が好きだったから。これだけ言うと、豚部と養鶏部も選択肢に入るのですが、私は動物と長くて深い付き合い方がしたかったのです。それには一羽一羽の名前がない養鶏部や、ほぼ半年から一年の付き合いの豚部ではなく、一頭一頭名前がつけられていて、種つけの時から出産、離乳、育成牛、成牛へと成長するまでの長い時間を共に過ごすことのできる酪農部にとても魅力を感じていました。
部門を決める長い話し合いの末、第一希望の酪農に入ることができた時はただ嬉しくて、これからどんな仕事をするのか、どんなことが起こるのかなど、何も考えていませんでした。
初めて先輩に管理指導してもらう時は、とても楽しみでした。それが、実際やってみると、とても神経を使う仕事であることが分かり、初めて一人で管理をまかされる前の日は緊張してねむれない程でした。そして、管理中に初めて牛にけられた日はずっと恐怖が消えませんでした。牛がとても怖いものに感じられ、愛情をもって接することができなくなってしまいました。(またけられたらどうしよう・・・怖いなぁ・・・)と思いながら搾ると、牛は私の気持ちを察しているかの様に、とても不安な顔をしておちつきません。(この人にまかせて大丈夫かなぁ…)と思われていたのかもしれません。そんな時は、動物にもちゃんと心があって、こちらの心をよみとることができるんだと思いました。私の気分がおちこんでいて、少しいいかげんに搾乳すると、牛は怒ってけってくるし、逆に元気な時、丁寧に搾乳すると、それに応えておとなしくしていてくれます。だから、私はいつも気分がおちこんでいる時は、牛の行動、表情を見て(これではいけない!牛たちのためにもしっかりしないと)と、励まされます。そして、励まされる度に、動物の力はすごいと感心するのです。
私がいつも牛たちに癒やされ、元気をもらっている様に、私も牛たちに癒やしや嬉しさといった幸福を提供していけたら良いなぁと思います。
酪農部に入ってから楽しみだと思うものは週三回の実習です。「実習かぁ、めんどくさい」などと言っている声をたまに聞いたりしますが、私にとって実習とは牛と接することのできる時間であり、外で作業できるとても楽しい時間なのです。私が好きな作業は、糞出しです。少し汚くてみんなのやりたがらない作業ですが、エサの配合や、なわづくりなどと違って、直接牛と触れ合いながらできるのです。糞出しは力仕事で汗をかきますが、終った後、牛が気持ち良さそうに、もみがらの上に寝そべっているのを見ると、その汗と疲れはとても気持ちの良いものへと変わります。
酪農部に入って一ヶ月ほど経った頃、子牛の出産に出会いました。子牛の出産は本当にすばらしく、ついさっきまで親牛のお腹の中で力を借りて生かされていた命が、外に出るとすぐに息をして必死に自分の力で親牛の乳を探して立とうとしています。生まれたばかりの小さな子牛からは、とても大きな生きる力を感じさせられました。本当に生きているんだなぁと感動しました。こうして私の動物への思いはますます強くなりました。
しかし、私が体験したものは喜びだけではありませんでした。もう一つ私が体験したものは悲しみです。それは牛の出荷です。FⅠという和牛の種類が生まれた場合、普通二ヶ月ほどで出荷されてしまいます。私が五時頃、朝一番に歩いていくといつもとび起きて、しっぽを振りながら寄ってきます。私はそんなFⅠの子牛たちが大好きでした。ずっと一緒に居られたら良いと思っていました。二ヶ月ほど経ったある日、夕方の管理に行くと、いつも迎えてくれる子牛が居ません。(今日は元気が無いのかなぁ・・・)と心配してハッチを覗くと、そこに居るはずのFⅠの子牛が居ませんでした。不安になって牛舎の周りを探しました。どこを探しても見つかりません。するとそこに先生が来られて「もう、出荷しちゃったよ」と言われました。私はこんなにも急に行ってしまうと思っていなかったので、頭がボーとしてしまいました。不思議に悲しみという感情は無くて、ただそこに子牛が居ないということが、信じられませんでした。次の日の朝も、いつもの様にハッチを覗いてしまい、居ないのだということに気が付いて、急に心の中が、寂しさでいっぱいになりました。
朝、一番最初に顔を見せてあいさつしてくれたあの小さな子牛が、私にとってとても大きな存在だったということに気付かされました。
酪農部に入ってまだ四ヶ月ほどしか経っていませんが、今までの経験で、やっぱり動物は私にとって必要なものだと思いました。
そこで私は考えてみました。私は今、牛たちに必要とされているのでしょうか。可愛がっているだけでは駄目なのだと思います。
牛を見る目をもっと見開いて、小さな変化にも気付ける力をつけたいと思います。例えば、牛舎を清潔に保てるのも衛生上の愛情、丁寧に乳を搾るのも乳房炎などを防ぐ愛情、いち早く病気などに気付くのも体調管理上の愛情であり、まだ私には出来ていないことの方が多い様に思います。牛のためにできること、それは日々の管理や実習の中にたくさん隠されています。今、私が出来ること。それを探し出して、牛にとって重要なパートナーになれる様にがんばりたいです。いつ牛との別れの日が来るのか分からないのだから、牛たちとの毎日の触れ合いを無駄にしないで、いつでもベストな接し方、後悔しない日々をおくっていきたいと思いました。これからも、いろんな発見がまだまだありそうで、楽しみです。そして、酪農部で過ごす約一年半を、後悔のない充実したものにしていきたいと思っています。
Posted by あいのう高校 at 10:47│Comments(3)
│農業クラブ
この記事へのコメント
とても素直な意見発表見させてもらいA.Sさんに会いに行きたくなりました。この道は険しいけれど、牛が教えてくれる充実や感動も大切だれど、『牛に教えてもらう(観察する)』とっても基本的な、たいせつな仕事の1つだと思いますよ~。
僕も、当時はじめて酪農部の管理当番に行ったとき、それはなんと分娩でした。しかも、難産で…何も分からないまま助産をしました。それがはじめての仕事でした(^^)。今思うと、かなりラッキーマンです。
ガンバレ酪農部!後輩たち(^^)!
失礼!ちょっと先輩ズラしちゃいました(^^;)。
僕も、当時はじめて酪農部の管理当番に行ったとき、それはなんと分娩でした。しかも、難産で…何も分からないまま助産をしました。それがはじめての仕事でした(^^)。今思うと、かなりラッキーマンです。
ガンバレ酪農部!後輩たち(^^)!
失礼!ちょっと先輩ズラしちゃいました(^^;)。
Posted by 35期ふぉりくるうぇーぶ at 2006年12月17日 00:36
私にも、愛農時代忘れられない仔牛が居ました。
どうか、精一杯のお世話をしてあげて下さい。
どうか、精一杯のお世話をしてあげて下さい。
Posted by nano at 2006年12月17日 01:06
元・酪農部の皆さま!
後輩に、励ましの言葉ありがとうございます!
同じ酪農部同士だからこそ、作文を読んで共感できた事も多かったのではないでしょうか!?
お二人の感想を本人にも伝えますね!
ありがとうございました!
是非またあいのう酪農部を覗きにきて下さい。
後輩に、励ましの言葉ありがとうございます!
同じ酪農部同士だからこそ、作文を読んで共感できた事も多かったのではないでしょうか!?
お二人の感想を本人にも伝えますね!
ありがとうございました!
是非またあいのう酪農部を覗きにきて下さい。
Posted by 小泉 at 2006年12月18日 01:09